(一宮市萩原町に伝わる)
応仁の乱でのことじゃ。小笠原駒次郎は傷ついた体を引きつりながらも、 怪我をした白サギを助けてやったことがあったそうな。 それから何日かして、駒次郎が敵に取り囲まれた時、白サギが刀をくわ えて飛んできた。振り上げるだけで白サギのように舞って、敵を切り倒す、 そりゃすばらしい刀やったそうな。 数年の時が流れた。 駒次郎は、萩原串作村の日光川のほとりに住んでおった。白サギからも らった名刀を携えて明日の暮らしに事欠いても、侍を捨てきれずにいた。 「この刀さえあれば、もう一度京へ上って、一旗揚げることができるやもし れん」 そんなある夜、夢枕に、一人の童子が現れた。 「私は日光川の主です。おうわさの名刀を譲ってほしくて来ました。明日、 川へ投げてください。そうすれば、きっと家運を盛り返してあげましょう」 駒次郎は飛び起きて日光川へ駆けた。 「あの目は、あの白サギに違いない。わしの心の内をさっして来てくれた のか・・・」 刀は川面を、舞うように沈んでいくと、小さな渦が巻き起こり、壺が浮かび 上がった。 夢で教えられたとおり、壺の中の種をまいた。 すると、白ケイトの花が咲き、その種を干して煎じ薬にし、大勢の人々に分 け与えるうちに、駒次郎の家は、、しだいに栄えていったという。 |