(一宮市木曽川町に伝わる)
ずっと昔から、葉栗郡木曽川町玉ノ井にある賀茂神社は雷除けと目の病に 効く清水が湧き出ておることで知られておった。 ある夏の日のこと、境内から村人のいきりたった声が聞こえてきた。 「神主さん、こともあろうに雷除けのお札をだした日に、神社へ雷が落ちる なんてどう責任をとってくれる。」 神主はおろおろしながら神様を呼んだそうな。由緒ある京都の賀茂神社から 授かり継ぐ雷除けじゃで、神様もほっておけんかったんだろう。 一瞬、神殿が目もくらむような五色の光で包まれたと思ったら、その光が 人間の形になって神様がおりてきた。 「村の衆ようわかった。落ちた雷をこの場へ引き出して、二度とこのような ことがおきないようにこらしめるから、今日はこらえてくれ。」 境内の隅に、上半身裸で虎の毛皮のパンツをはいた生きものがうずくまって おった。 クルクルの赤毛のてっぺんに可愛い白い角を一本生やし、大きな 壺を抱えたカミナリが引き出されたそうな。 まだ、子供だったが、神様は村人 に約束した手前どうすることもできん。村人の前でカミナリの片腕を切り取って 、神社に封じ込めてしまったそうな。 壺の中には清水がいっぱいつまっとった。 このカミナリは、仲間とちょっと違った髪の毛でな、みんなまともな角が生える だろうかと心配したそうな。だが、立派に生えたんで、目の悪い母親に見せる ために、どうしても賀茂神社の清水がほしかったんだと。 それを知った神様は、後でこっそりカミナリに腕を返してやったそうな。 |